撮影:井口健

佐藤 拓実 様

 佐藤さんから建築以外ではどんな芸術家になりたかったかという質問ですが・・・。

 小生の場合、建築家という仕事の中で潜在的に彫刻的、絵画的な意識を持っているので、他への選択は考えられません。詩的な要素も含まれていると思います。

 小生が実務の中で行って来た仕事で、彫刻的なものはモニュメント類、北海道百年記念塔、日本最北端の碑、インディギルガ号遭難者慰霊碑、いさりの碑、札工の鐘等。絵画的要素の含む仕事には今金中学校のレリーフ、北洋相互銀行東室蘭支店、北野支店の壁画的なデザインを造って来た事等がある。

 彫刻的デザインの建物としては、下野幌ショッピングセンター、下藤ショッピングセンター、病院では坂泌尿器科病院があり、病院の開院祝賀会において、医大の熊本教授は東の百年記念塔に対に、坂病院は西の記念塔であると祝辞で述べられた。乾杯!

 小生が建築以外で感銘を受けた作家、芸術家についてお訊ねですが、先ず建築家について話したいと思います。建築の創造的行為には絵画、彫刻、音楽、文学に於ける、詩等の心理を追求することを持ちます。建築を学び始めた当初、世界の巨匠のコルビュジェ、ミース、ライトの三人。一番共鳴したのはフランク・ロイド・ライトであった。ライトの有機的建築(オーガニックアーキテクツ)論であった。自然と人間の共存。ライトは他の如何なる思想の影響も受けていないと主張するが、日本に学んだことは否定していない。岡倉天心がアメリカ滞在中に描いた『THE BOOK OF TEA』(『茶の本』)があり、ライトも読んでいる。これは東洋、日本に於ける芸術文化についての啓蒙書である。この中で天心は建築の本質は壁や天井にあるのではなく空間にあるという事を書いている。これを読んだライトはショックを受けた事を告白している。しかしこの思想を実際に実現するのはライトである・・・という訳です。

 日本の芸術文化に尊敬の念を抱いていたライトは浮世絵に感動し、北斎や広重の作品をかなり収集していたようだ。北海道における建築家の先達、田上義也氏が若いころ帝国ホテルの現場でライトに師事されて学んでいた。後年小生は田上先生よりライトの話として聞くことが出来たことがある。それは、ライトは日本の鳥居のデザインが良いとの事であった。

 感銘を受けた芸術家は少なくないけれど、ここではロシアの音楽家ストラビンスキーのことを書こうと思います。少年のころ、学校の引率で劇場に映画鑑賞に行ったことがあった。見たのは『ファンタジア』。今でいうアニメーション映画であった。すばらしい映像と音楽・・・心に深くきざまれ感動した体験であった。

 使われていた音楽はストラビンスキーの『春の祭典』。調べてみるとウォルト・ディズニー制作のアニメ映画。1940年11月13日アメリカで公開と記されていた。時は流れて近年、パソコンのインターネットでストラビンスキーのバレエ音楽「春の祭典の初演の再現」という題名の動画を観賞した。ロシアの原始宗教の世界というもの。会場はパリのシャンゼリゼ劇場、指揮、ピエール・モントゥー。振り付け、ニジンスキー。演奏時、会場は聴衆の大混乱と感動を巻き起こし、大スキャンダルとなったようだ。動画を観賞している小生も最初から最後まで・・・。驚きと感動に満ち、気分は最高潮に達した。ストラビンスキーとニジンスキーの芸術に天才の生き様の一典型を見た思いであった。オーケストラの演奏とダンサーの踊りも機敏ですばらしい!!

2020年9月10日 井口 健