撮影:佐藤拓実

井口健 様

 拝復、前の往復書簡から、だいぶ日があいてしまいました。東京の夏はお盆を過ぎて暑さも落ち着くかと思いきや、まだまだといった具合です。

 「建築家への道のり」、拝見しました。2級建築士でいらしたお父様から製図の基本を学び、芸術への道を志しながら偶然が重なり、運命(と言ってよいのでしょうか)のように中学、高校へと進学され実習を経て採用となり、百年記念塔コンペの大賞を勝ち取った後の今金町との関わりまでが、笑いを誘うようなエピソードも交えて語られていて、井口さんの人となりを更に知ることができ面白かったです。

 書道や絵画の心得をお持ちであったお父上をはじめ、楽譜の誤りを指摘した大岡先生、札工の渡辺先生、全道展会員の新覚吉郎先生、新道展会員の丸山恵敬先生など、井口さんが芸術について教えられ刺激を受けて来られた身近な方々が印象的でした。この往復書簡の最初で、恐れながら井口さんを建築家ではなく敢えて「芸術家」とお呼びしたのは、井口さんが絵をお描きになるのが意外に思われたことが理由の一つでしたが、「建築家への道のり」を読めば、それは意外なことではないとも感じました。 

 そこでお尋ねしたいのですが、芸術大学への進学も考えていらした井口さんは、

 建築家以外でしたらどのような芸術家になりたかったですか?

 画家でしょうか。彫刻家でしょうか。それとも音楽家?書家という可能性もありますね。併せて、井口さんが建築以外で感銘を受けた作品や作家、芸術家についても、伺えればと思います。幸いインターネット上の往復書簡は紙幅の制限がありませんので存分に語っていただきたいです。そのことは、建築家・井口健とその作品を理解したい方々にとってきっと大きな助けになる、と、私は期待しております。よろしくお願いいたします。

敬具

2020年8月29日 残暑の東京から 佐藤拓実

※全道展 http://www.zendouten.jp/member/bukko.html

※新道展 http://shindoten.jp/history/index.html