撮影:佐藤拓実

佐藤拓実 様

 佐藤さんの思考法にちょっと戸惑いを感じています。塔がモニュメントであり彫刻であるという両義性があるとの見解に同意します。百年記念塔は建築基準法では工作物として認定されています。
 モニュメントとしての建築とそれ以外の建築との構想の違いについてとありますが、いずれの課題についても同一で思考に異なることはありません。与えられたテーマ―について、その求められる課題に機能と合わせ美的に創造しようと思います。作品になり・・芸術作品に昇華させたいと願い努力をします。しかしそれは難題です・・「芸術は人類の母である」。母は優しくもあり、厳しくもあり・・・!


 建築は芸術の総体であり、総合芸術であるともいわれます。絵画・彫刻・音楽・などの。小生もそう認識をしております。しかし純粋芸術とは言えず、建築には人間が一体として深くかかわり、鑑賞者ではないということです。絵画や彫刻・音楽などは鑑賞者として人間はかかわりますので・・・ともに期待するところは人間の心に深く触れることであります。
 特段に優れて美しい建築を・・「凍れる音楽・・」といわれます。奈良にある薬師寺の東塔という建築物があります。三重の塔で裳腰〔ひさし〕というものがついており六重の塔のようにも見えます、非常に優美なるが故に氷れる音楽と言われます。現在は改修工事が行なわれています。


「自然は芸術家である・・・・・・・・・・・!!」
自然素材による建築物は時間の経過とともに熟成し、風格を増すということであります。創建1300年の薬師寺東塔はその一例です。百年記念塔もこのような生きざまを期待したものです。薬師寺は西塔も金堂も復元されましたが・・その差は歴然としていました。やはり芸術家としての自然の風雪の参加と時間が求められます。

佐藤さんの意図する問いに適切かどうかわかりませんが・・とりあえず送信致します。

井口 健    2020・5・20